【短編小説】人間崩れ

目を開くと見慣れた天井が目に入って、また今日も1日が始まった。

 

体の動きを邪魔する布団を壁に追いやり、見たくもないテレビをつける。

見たところで大したニュースなんて何もない。

と言うよりも、そもそも心が動かされるほどの興味ごとなんてハナから何もないのだ。

 

どうせなら地球が滅亡するくらいしてくれりゃいいのに。

 

また今日が始まってしまった。

まるでタイムリープしているかのように同じ日々を繰り返し、いつしか心は生きることに慣れてしまっていた。

最後に”生まれて初めて”の経験をしたのはいつのことだろうか。

最後に心から笑い、泣いたのはいつだろう。

 

今日も動きたくない体を動かしてやりたくもない仕事をするんだ。

人間の定義とは「言葉を持って協同して労働する生命体」らしい。

仕事なんかクソとしか思っていないが、そのクソのおかげで俺はまだ人間に定義されているようだ。

 

もしも今日会社を辞めたら俺はその途端に人間から切り離され、灰色に霞んだ心を入れるただの容器になるのだろうか。

こんなことを考えるだけ時間の無駄だろう。さっさと支度をしなければと思いながらも、思考は出口のない迷路のように同じ考えを繰り返し、存在するはずのない答えを探し続けてしまう。

思えば昨日も、一昨日も同じことを考えていた。

いやひょっとするともうずっと長い間考え続けているのかもしれない。

とすれば今日は昨日の復習だ。

 

さぁ長い人生で不要な1日を始めよう。

 


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